カテゴリー「劇場公開」の記事

2019年4月20日 (土)

ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ

Hitler_versus_picasso
 
 イタリア&フランス&ドイツ
 ドキュメンタリー
 監督:クラウディオ・ポリ
 出演:トニ・セルヴィッロ
     
     
     
 
 
 
【物語】     (シネマトゥデイ)
 1933年に政権を掌握したナチスドイツはピカソ、ゴッホ、シャガールらの作品を退廃芸術だとして、純粋なアーリア人による写実的で古典主義的な作品をよしとした。青年時代に画家を目指していたヒトラーは故郷に美術館を建設する野望を抱き、フランスなど周辺国の美術館やユダヤ人の富裕層から名品の略奪を繰り返す。
 
 ドキュメンタリーの中でもスポーツ&犯罪とならんで美術系は好きなジャンル。画家や作品、美術館の舞台裏を紹介した作品ももちろん好きだけれども、取り分けて贋作や盗難&略奪と【美術と犯罪】の組み合わせにスゲェ興味がある。
本作は戦時中、ナチス・ドイツがヨーロッパ各地から略奪した膨大な芸術品の奪還活動の歴史を追ったものと、いっちゃん興味あるところなんで、期するところもスゲェ大きく是が非でも観たい作品だったんで、張り切って観に行ってきた。
 
 ヒトラーを筆頭に美術品略奪による争奪戦をはじめ、彼らに追随したお抱えの美術商の闇、行方知れずの美術品を追跡する人たちの姿と今に続く美術品略奪の顛末を追った本作はNHK特集程度のものであったけれども、興味ある題材ということも手伝ってオモシロく観ることができた。また、「ミケランジェロ・プロジェクト」や近々では「黄金のアデーレ 名画の帰還」と幾度となくナチスによる美術品略奪を描いた作品を観てきているにもかかわらず、美術と【犯罪】をひと括りにすることはあっても【戦争】や【政治】と絡めて捉えることが今の今まで薄かっただけに新しい視点が開けたといった感じ。
 「壁にを飾るためだけに描くのではなく、絵は盾にも矛にもなる、戦うための手段」と自身が画家を目指したにもかかわらず、芸術を文化歴史としてではなく権力の象徴として捉えてしまったヒトラーの行為に対してピカソが残した言葉の重みたるや。
にしても興味ある題材と言いながらも何ゆえ【政治と芸術】に目が行かなかった?と我ながら、情けなくもあれば反省の念も…。
 
 パウル・クレーやカンディンスキーにシャガールといった非ドイツ主義の画家や作品は【退廃芸術】とされナチスから弾圧された(オレとしてはカンディンスキーはかなり好きだけどなぁ)や、大好きな大贋作者ハン・ファン・メーヘレン(「私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件」お薦め)によるゲーリング騙しのエピも紹介されていて、この辺の知識を運良くインプットしていたこともあってかなり興味深くオモシロく観ることができたんで、劇場に足を運ぶのであれば多少の前知識を詰めてから行ったほうがイイかと。
【美術と犯罪】であれば「消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス」や「「盗まれた世界の名画」美術館」「FBI美術捜査官―奪われた名画を追え」がお薦め!

2019年4月14日 (日)

アンデッド / ブラインド 不死身の少女と盲目の少年

555
 
 オーストリア
 ホラー&ファンタジー
 監督:ジャスティン・P・ラング
 出演:ナディア・アレクサンダー
     トビー・ニコルズ
     カール・マルコヴィクス
     マルガレーテ・ティーゼル
 
 
【物語】     (シネマトゥデイ)
母親が連れ込む男にひどい暴行を受けたミーナは森に捨てられるが、姿を変えて生き延び人間の肉を食べるようになる。
彼女が潜む森に入った者が生還しなかったため一帯はデビルズ・デン(悪魔の巣)と呼ばれ、誰も寄り付かなくなる。
あるとき、森に凶悪な指名手配犯が逃げ込み、犯人はミーナの餌食となるが人質として盲目の少年を連れていた。
 
 マニアックな作品を数多く公開してくれていた銀座のシネパトス、渋谷のシアターNといったマニアの殿堂が相次いで閉館してしまったことで、大好きなB級ホラーを劇場で観る機会がめっきり減った今日この頃にあってHTC渋谷が「未体験ゾーンの映画たち」と銘打って、先述の劇場の意思を継いでマニアックな作品を間断なく公開してくれることは実にありがたいことである。
そんな中、アンデッドの少女と盲目の少年の交流を描いた本作に大きく惹かれるところがあったんで張り切って観に行ってきた。
 
 ザックリ言っちゃうと「ぼくのエリ 200歳の少女」の詩情や深み驚きが薄い版といったところ。
ミーナがアンデッドになった経緯は描かれている一方、少年アレックスに到ってはナゼ誘拐されたのか? 誘拐犯に対して何かしらの信頼を置いているのはナゼか? そしてナゼ目を潰されたのか?が全く描かれておらずで、もう少しこの辺の説明が欲しい。
 また、ラストでミーナが人間に戻った行もおそらくアレックスとの交流を経て人の心を取り戻し、かつ呪われた森から抜け出たことで呪いが解けたからみてぇなもんなんだろうけど、もしかしたらある一定量の人の肉を喰ったからなのか?の説明もなし…まぁこの辺は手前ぇで感じるものであって全部が全部語っちゃうのも野暮ってぇところだろうけど、何かにつけて【ナゼ】が多く残る。
 
 アレックスが盲目であったことでミーナの醜い外見ではなく荒んだ奥にある本来のキレイな心を、ミーナは同じ境遇にあるアレックスに自分を重ね合わせてと互いの心を見合い、互いに心に変化を来たしのドラマをはじめ、設定も雰囲気もヨカッタだけに細かいところで中途半端感が否めなくあったことは実にもったいない…。

2019年4月13日 (土)

マローボーン家の掟

Marrowbone
 
 スペイン&アメリカ
 ホラー
 監督:セルヒオ・G・サンチェス
 出演:ジョージ・マッケイ
     アニャ・テイラー=ジョイ
     チャーリー・ヒートン
     ミア・ゴス
 
 
【物語】     (シネマトゥデイ)
 マローボーン家の4人兄妹は、森の中の大きな屋敷でひっそりと生きてきた。
彼らは母親が病気で亡くなり凶悪な殺人鬼である父親を殺害したことをきっかけに不可解な現象に見舞われる。
母の死後に生まれた五つの掟が次々と破られ疲れ果てた長男のジャックは妹たちを守るためにある決断を下す。
 
 一時期はハマっていたこともあって漁るように観ていたのだけれども、最近ではコレといって惹かれる作品が見当たらずすっかりご無沙汰となっていたスペイン産のホラー&ミステリー。
作品の雰囲気もさることながらキャストも今ではミア・ワシコウスカと並んですっかりご贔屓女優さんのトップグループの仲間入りしているアニャ・テイラー=ジョイということで、期するところが大きくあったんで張り切って観に行ってきた。
 
【ネタバレ要注】
 外に出ちゃいけねぇとか、鏡を見ちゃいけねぇとかの【掟】で縛ってきてることから、まずは「ヴィ〇ッジ」をそして雰囲気漂う【館】系なんで「ア〇ーズ」、そして何より漠然と「アイ〇〇〇ィティ」を念頭に置いて鑑賞していたこともあって、途中ミスリードに引っかかりもしながらもオチ当ては100%スッキリ気持ちよく解明とはいかなかったものの7割がた正解。
ホラー一辺倒ではなく家族愛と思いのほかドラマ性が強く、スペイン映画らしくドライな感じの映像も美しくかなり見応えのある作品。
 セルヒオ・G・サンチェス監督さん「永遠の子どもたち」の脚本を担当したいたこともあってか、ドア塞ぐの好きだなぁといった感じもすれば、この辺なんかは「ジョジョの奇妙な冒険 第4部」の億奏の親父さんエピにと野暮な思いが頭に浮かんでしまった。
余計ついでに言えば、終盤の屋根裏部屋での「生きてたんかい!?」の一連の出来事にいまいち腑が落ちず…この行を読み切れなかったのがスッキリ気持ちよくイカせてもらえなかった最大の原因。
 
 キャスティングに派手さは無いもののマローボーン家の4人兄妹全員がとてもヨカッタ。
他のレビューなかを読むと長男役のジョージ・マッケイに好意的な意見が集中してるけれど、オレ的には次男のチャーリー・ヒートンと妹のミア・ゴスのふたりの存在感が取り分けてヨカッタ。
そしてご贔屓のアニャ・テイラー=ジョイのカワイさも光ってたし、ノーブラで歩いているシーンなんか最高だった💛

 

2019年4月 7日 (日)

麻雀放浪記 2020

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 日本
 SF&コメディ&ギャンブル・博打
 監督:白石和彌
 出演:斎藤工
     ベッキー
     竹中直人
     的場浩司
              
                                                                                                                                                                                                                                                  
【物語】     (シネマトゥデイ)
 1945年から2020年にやってきたギャンブラーの坊や哲は自分が知っている戦後とは違った日本を目の当たりにする。
高齢化と少子化による人口減少、共謀罪による言論統制などさまざまな問題を抱える時代に坊や哲が麻雀で戦いを挑む。
 
 もっぱらゲームで、年に友人と2~3回ほど卓を囲む程度の麻雀好きで、真田広之主演の映画はもちろん阿佐田哲也氏の原作の本作が大好きなんで公開を楽しみにしていた作品。
てっきりオリジナルのリメイクかと思いきや坊や哲が現代にタイムスリップして云々の原作と大きくかけ離れたものであることを前売り購入後に知り「オレが観たいのはこういうのじゃなくてだねぇ…」の思いになったことで行くか行かぬかで迷うも「前売りをムダにするのも…」ということで張り切って観に行ってきた。
 
 そもそもからして坊や哲が1945年の戦後から2020年にタイムスリップタイムスリップしてくる設定からして「?」なのに、ちゃんと時代背景の説明はあるものの20年の東京五輪を前にまた大戦が起こり敗戦しての混乱期の設定も正直なんの意味があるのか理解しかねる。青春篇(45年)のドサ健&出目徳にママに似たキャラと麻雀五輪(20年)で対局も「?」。この面子で打ち合うならなにも現代に持ってくる意味もないような…勝負の緊張感を楽しむのも確かも、本作は坊や哲を介してドサ健や出目徳といった博打打の生き様を観るといったところなんだけど、その辺の描写が極薄で何よりコメディパートがダダすべりで全く笑えず。
麻雀でいうところの【大ちょんぼ】的な作品で少なからずそれなりに期待しただけにすげぇガッカリ…。
 本作の魅力のひとつでもある【いかさまありきの勝負】も、通しやすり替えは出来るとしても卓が【全自動】だから積み込みはムリだから「どうするのか?」と思っていたらここは紆余曲折を経て【手打ち】になったことで解消。それによる天和&人和に緑一色と役満炸裂の【いかさま合戦】の爽快感と、AI化し無敵となったママを哲&ドサ健&出目徳が協力して包囲戦を展開するあたりは原作の色が濃く出ていた感じでこの辺は高評価。
 
 斎藤工、的場浩司に小松の親分さんは申し分なしも、ベッキーはどう考えてもだし、竹中直人もどこを切り取っても竹中直人でしかなくぶっちゃけ見飽きた感がつよい。プロ雀士の森山茂和プロの姿があったのはウレシクあった。そう思うと去年亡くなったレジェンド小島武夫氏の姿を観たかった。
また、対局中に流れるBGMがどことなく「ブレードランナー」、ラストは「ターミネーター」とアンドロイドを意識した演出も評価したい。

2019年4月 6日 (土)

希望の灯り

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 ドイツ
 ドラマ&ロマンス
 監督:トーマス・シュトゥーバー
 出演:フランツ・ロゴフスキ
     ザンドラ・ヒュラー
     ペーター・クルト
     アンドレアス・ロイポルト
              
                                                                                                                                                                                                                                                  
【物語】     (シネマトゥデイ)
旧東ドイツのライプチヒ。27歳の無口な青年クリスティアンは、スーパーマーケットの在庫管理係として働くことになる。
仕事を教えてくれるブルーノや魅力的な年上の女性のマリオンら職場の人たちは親切だったが節度があった。
   
 ヒトラー&ナチス関係以外のドイツ映画は、たぶん思い過ごしだとは思うけどなんかスゲェ久々の気がしてならない。
大好物の日常系ほっこりコメディのところへ持ってきて、18年のドイツ映画賞で主演男優賞受賞をはじめ他部門にノミネートの情報と予告編の簡素な映像にどことなく敬愛する映画監督のひとりであるアキ・カウリスマキ監督ぽさが感じられなくもということで、期するところが大きくあったんで張り切って観に行ってきた。
   
 冒頭の「青き美しきドナウ」のリズムに合わせてフォークリフトが巨大スーパー内を行きかうシーンは目をスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」を彷彿させるものがあり、フォークリフトに対してこれほどまでにカッコイイとか美しいといった感情を抱かせられるとは思いもしなかった。
 それはそれとして、クリスティアンのロマンスと成長劇、その彼を指導し見守るブルーノをはじめとするベルリンの壁崩壊後の混乱期、取り分けて急激な時代の波に乗れず取り残されたスーパーで働く仲間たちそれぞれのドラマも味わい深く、その寂寥感漂う人生譚は先の「2001年宇宙の旅」じゃないけどこれまた宇宙といった趣の作品。
 全体的にくすんだ色調で統一されていて寂寥感のある物語にマッチしているのだけれども暗いというワケではなく、矛盾するけれどもどちらかといえば温かみが感じられたり、深夜のバス停とバスのヘッドライトとバスから溢れる灯りのコントラストは美しく本作は色彩と光彩に目を惹かれる。個人的にこの辺にこだわる監督さんは高く評価したい。
ただ、惜しむらくは内容のワリには思いのほか長尺のため、ラスト15分ほど全力でダレきってしまったのが…。
 
 ベルリンの壁崩壊から30年も経つのか…ついこの間のようだよ…全く歳もとるはずだぜ…。
ゴリゴリの共産時代の東ドイツがどれほど良かったのかは解らないけれど、当時を懐かしむブルーノの心情にプーチンの「ソ連を懐かしまない者には心が無い ソ連に戻りたがる者には頭が無い」の言葉を思い出した。なんであれ【心】なんだね。

2019年3月30日 (土)

コンジアム

Gonjiam
                                 
 韓国
 ホラー
 監督:チョン・ボムシク
 出演:ウィ・ハジュン
     パク・チヒョン
     イ・スンウク
     ムン・イェウォン
              
                                                                                                                                                                                                                                                  
【物語】     (シネマトゥデイ)
 恐怖動画を配信しているチャンネル「ホラータイムズ」が一般の参加者を募集し、有名な心霊スポット「コンジアム精神病院」に潜入する。隊長で主宰者のハジュンをはじめ7人の男女はカメラやドローン、電磁検出器といった機材を持ち探索を開始。
サイトへのアクセス数は上がっていくがハジュンの仕掛けた演出ではない怪現象が次々と起こる。  
   
 それなりに韓国映画を観ているつもりではあったけれども、これがホラー作品となると劇場&レンタル含めて思いのほか観ていなかったようで、記録を辿ってみると99年に公開された「少女たちの遺言」以来となっていて実に20年ぶり…まぁ韓国映画ってぇとサスペンス作品が優れていることもあってそっちをウェイトを置いて攻めてることもあるから解らん話でもねぇわな。
そんなこんなで、韓国歴代2位のホラーに期するところも大きくあったんで張り切って観に行ってきた。
    
 早い話、韓国版「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」で、いろいろと演出を施してはいるけれども定型文といったろころなうえに、ツアーに参加した若者たちのキャラの薄さと合コン感のためいまいち乗れきれずになるも、院内に潜入してから女の子のひとりが極度のパニック状態に陥ったあたりからそれなりに怖オモシロくなった感じ。
 幽霊や悪霊はもちろんとして、ホントのところ心霊スポット潜入レポをYoutubeにてライヴ配信、それもアクセス数稼ぎ=収入のためと現代らしいものの考え方や、偏見的な見方をさせてもらうとYouTuberの軽薄さや軽挙妄動の怖さをだったのかもと…確かに昨今の軽薄さは幽霊や殺人鬼よりも怖いものがあってある意味ホラーだ。
そして江戸川乱歩の「人間椅子」「人でなしの恋」を彷彿させなくもない怖がらせておいての落語的なオチは高評価。
 「ブレア~」のときは手持ちカメラだったがゆえに映像のブレが激しくあって観づらくあったけれども本作はなんちゃらカメラによる全くブレのない映像、そして自撮りしながら自分視点を同時に撮れるカメラの多アングルは緊迫感があってかなり見応えが。
逆もまた真なりでブレが無いことでパニック時の緊迫感が削がれていなくもでモヤモヤが残るのも事実…。
 
 行方不明になった撮影クルーの資料や遺品を公開しフィクションをさも本当の出来事のような演出を公開前から施した「ブレア~」は改めてスゲェ作品だったんなぁと思い起こさせてくれる。
そんなこんなで、悪かぁねぇけど同じわちゃわちゃホラーならアイドルが廃病院で肝試ししてるのを観た方が遥かにオモシロれぇかなぁと。

2019年3月23日 (土)

ブラック・クランズマン

 アメリカ
 ドラマ&伝記&コメディ
 監督:スパイク・リー
 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン
     アダム・ドライヴァー
     ローラ・ハリアー
     トファー・グレイス
                                                                  
                                                                  
【物語】     (シネマトゥデイ)
 アメリカ・コロラド州コロラドスプリングスの警察署に初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワースは、捜査のために電話で白人至上主義団体KKKのメンバー募集に応募する。
黒人であることを隠して差別発言をまくし立てた彼は入会のための面接に進み、彼の代わりに白人の同僚刑事フリップ・ジマーマンが面接に向かう。
                                                              
 「セメントの記憶」なんてあるからこっちはてっきり世界の高層ビルなり有名建築家による建築物が建てられていく様を追った建築関係のものと思っていたんで観る気満々でいたのに、実際は建築現場で働くシリア難民の姿を追った社会派のものと期待していたもの大きくかけ離れていたことで、急遽惹かれるもスルーすることにしていた何かと話題だった本作を観ることに。
そんなワケで張り切って観に行ってきた。
                                                                   
 人種差別が激しかった70年代に黒人刑事がKKKに接触して云々と普通に考えればコメディの様相なのに、多少の盛りはあるにせよこれが実話ベースというから驚き以外に言葉がない。
まぁ実際のところコメディ調に作られていて随所で笑わせてはくれるけれども、その実は昔から続き未だ解決を見ないアメリカが抱える闇を描いてとかなり真面目でそのメッセージ性はきわめて高くあった。
コメディな部分に目が行きがちだけれども、現実を描いている点では本作も上記の「セメントの記憶」同様に社会派の作品。
 トップよりも力を持つ№2、周りに感化されてるだけの無知っぽい奴と組織を構成する連中のキャラ設定と強大な組織を追い詰めるも結局はそこに政治が働いて…はかなりツボ。
黒人と白人のしゃべる方というかイントネーションの違いというものに詳しければもっとオモシロく観られたのかもと…にしてもいくら電話とはいえしゃべり方で黒人か白人くらいかは判りそうな気がしてならねぇのだが。
                                                       
 イイとも悪くともなく…なんか思った以上にコレといった印象が残っていないロン・ストールワース役のジョン・デヴィッド・ワシントン。
黒人だし、下の名前もワシントンだから漠然とデンゼル・ワシントンの息子なんかぁと思ったんで帰ってきて調べてみれば、まさかホントに息子だった。まぁ親父さんのオーラと比べるとかなりまだまだってぇ感じだな。

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2019年3月16日 (土)

ウトヤ島、7月22日

Utoya_22_juli
 ノルウェー
 ドラマ&サスペンス
 監督:エリック・ポッペ
 出演:アンドレア・ベルンツェン
     アレクサンデル・ホルメン
     ブレーデ・フリスタット
     エリー・リアンノン・ミューラー・オズボーン

                                                                                     【物語】     (シネマトゥデイ)
 2011年7月22日午後3時17分、ノルウェーの首都オスロ政府庁舎爆破事件が起き、8人が死亡する。
さらに同日の午後5時過ぎ、オスロから40キロの距離にあるウトヤ島で銃乱射事件が発生し、32歳のノルウェー人アンネシュ・ベーリング・ブレイビクがサマーキャンプに参加していた10代の若者たちを次々と殺害する。

 10年ほど前にすでに「マジシャンズ」「PVC-1 余命85分」、最近では「カメラを止めるな」と、長時間にわたるワンカット撮影ものも今となっては手垢がついて目新しさ無いものの、コロンバイン高校の銃乱射事件を扱ったガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」と実際に起きた事件の実録ものは緊張感も高くオモシロいこともあって大好物なんで張り切って観に行ってきた。

 冒頭のノルウェー政府機関庁舎爆破テロのことは当時「テロと無縁ぽい北欧でテロとはねぇ…」と、漠然とした恐怖を感じたことがあったんで、このテロ事件のことはちゃんと覚えていたのだけれども、ウトヤ島銃乱射事件に関しては全くもって記憶になく「こんなことがあったのか!」が正直なところ…。
 それはそれとして、事件発生直後の周りのパニックに感染しロッジに逃げ込むシーンや、遠目に見える人影程度しか見えない犯人の姿に響き渡る銃声と、見えてるのに聞こえているのに何が起きているのか解らない漠然とした恐怖感は半端なく終始緊張状態にあった感じ。当初はワンカットで撮る必要性がいまいち理解できなかったのだけれども、観てみればワンカットであるからこそこの臨場感が生まれたのであろうと。
 と思いのほか前のめり気味になるもそれも終盤での逃げ込んだ崖下での男の子との冗長とも思えるやり取りにダレを覚えもすれば、黄色いレインコートを着た少年の行なんかは「シンドラーのリスト」の赤い服を着た少女を、「ミスト」ぽいラストと徹底してリアルで押し出してるのに、ところどころで変にエンタメぽさを挟んできて、結果イイんだけど何かチョット…の心持ち。
まぁドキュメンターでないことは確かではある。
 
 にしても本作を観た1週間後にブラジルの小学校とニュージーランドのモスクで銃乱射事件が立て続けに発生て…。
マジで世の中どうなってんのよ…。

2019年3月 9日 (土)

マイ・ブックショップ

The_bookshop
 スペイン&イギリス&ドイツ
 ドラマ
 監督:イザベル・コイシェ
 出演:エミリー・モーティマー
     ビル・ナイ
     パトリシア・クラークソン
     ハンター・トレメイン


                                                                                     【物語】     (シネマトゥデイ)
 1959年、戦争で夫を亡くしたフローレンスは書店が1軒もないイギリスの田舎町で夫との夢だった書店を開こうとする。
しかし、保守的な町では女性の開業は珍しく、彼女の行動は住民たちから不評を買う。
ある日、40年以上も自宅に引きこもりひたすら読書していた老紳士と出会う。

 ホッコリ系の人情奮闘喜劇、保守的な時代のイギリスの片田舎、本屋そしてお気に入りの女優さんの一人であるエミリー・モーティマー主演と、これだけ最高の素材で作られた料理が不味かろうはずがないッ!
キャスティングも舞台もイギリスだからイギリス映画かと思いきや、以外にもスペイン映画とのこと…まぁ別にどこの国であろうが旨そうであることに変わりはねぇし、本国スペインでもゴヤ賞で作品賞をはじめ3部門を受賞とあらば期待値がさらに上昇ってぇことで張り切って観に行ってきた。

 派手さこそ無いものの出る杭は打たれるで周りの嫌がらせにもめげずに、自分の夢を叶えるために孤軍奮闘するフローレンスの姿に応援せずにはいらなかったし、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」をはじめナボコフの「ロリータ」と本屋の物語らしいエピもありで本好きにとっては見応えがある。
ただ、町を仕切る鼻持ちならねぇマガート夫人を筆頭に嫌な奴らの何と多いことかなうえに、フローレンスが受ける嫌がらせのもかなりドギツイものばかりで、もうチョイ軽めのものかと思っていただけに思いのほかメンタルを削られる…。
 マガート夫人の妨害の理由も保守&封建的といった時代の風潮云々ではなくただの自己顕示によるものとその人間性たるやで、そのうえ金も政治力もあれば何かにつけて言うことを聞くおもねる連中もいてと、フローレンスにどんなに情熱や勇気があっても勝てるワケがなし…久々に強烈な憎まれ役だったんじゃなねぇかと。
だけにフローレンスの人間性に惹かれ協力する小さな相棒クリスティーン、世捨て人のブランディッシュの損得勘定なしの関係が際立ち、またフローレンスの想いを引き継いだクリスティーンの自分が今ここでなにをすべきか知っている聡明さと、それ実行に移せる勇気(裏を返せば蛮勇)は観ていてとても気持ちがイイ。

 妙な色気と落ち着いた感じ、時に晩熟感を漂わせるエミリー・モーティマーはやっぱりイイ 💛
まぁそういう役柄を多く目にするだけのことなんだろうけど、何かにつけて応援したくなる女優さんだ。
英国紳士然としたビル・ナイもヨカッタ。

2019年3月 3日 (日)

天国でまた会おう

Au_revoir_lahaut
 
 フランス
 ドラマ&犯罪&コメディ
 監督:アルベール・デュポンテル
 出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール
     アルベール・デュポンテル
     ロラン・ラフィット
     ニエル・アレストリュプ
 
 
 
【物語】     (シネマトゥデイ)
 1918年、御曹司のエドゥアールは、戦場で生き埋めにされたアルベールを助け出した際、顔に大けがをしてしまう。
戦後パリに戻った二人は、戦没者をたたえる一方で戻ってきた兵士には冷淡な世間を目の当たりにする。
戦争で何もかも失った二人は人生を取り戻すため、国を相手に前代未聞の詐欺を企てる。
 
 ストーリーもさることながら醸し出される世界観は100%間違いなくオレ好み。それに本国フランスでの大ヒット、17年のセザール賞で多数部門受賞という付加価値のほかにジャン=ピエール・ジュネ監督を筆頭にテリー・ギリアム監督、ティム・バートン監督と敬愛してやまない映画監督さんたちを彷彿させられと、さらに期待値を爆上げさせるとどめの殺し文句に「是が非でも観に行かねぇワケにいかねぇッ!」ってぇことで張り切って観に行ってきた
 
 戦争に翻弄された面々による復讐劇と再生劇であると同時に親子のすれ違いをも描いていて、日常の中にある異世界といった独特の世界観でありながら決してファンタジック一辺倒なもので終わるのではなく現実の厳しさや鼻に突かない程度の風刺とすべてが程よいバランスで、それぞれの感情や思惑が最後に一本に縒り合う巧さ、そして切なさとホッコリのWパンチのラストの余韻は素晴らしい。世界観はもちろんのことジュネ監督の「ミックマック」ギリアム監督の「バロン」、そして帰還兵とマスクに親子の確執ということで横溝正史の「犬神家の一族」の趣が感じられなくもで確かに謳い文句にあった通り。
 冒頭の最前線の悲惨極まりない現実とエドゥアールが手掛ける数々のアートフルな仮面の美しさの美醜、親子の愛憎といった各所での対比もさることながら、エドゥアールに振り回されるというか全てにおいて流れに流されてしまっていたマイヤールのお人よしぶりがともてオモシロく好印象。
そんなワケで正直なところ好き嫌いがハッキリと分かれるところかも知れねぇけどオレとしてはかなり好みの作品。
 
 マイヤール役のアルベール・デュポンテルってジュネ監督の「ロング・エンゲージメント」をはじめお気に入りの女優さんのカトリーヌ・フロ主演の「地上5センチの恋心」や「モンテーニュ通りのカフェ」とかに出演してて幾度となく目にしてたのか。
余談になるけど、第一次世界大戦後のフランスを舞台にした作品が個人的にツボ、これが海を渡ったイギリスとなると第二次世界大戦中&後の田舎を舞台にしたのがツボだったりするんだけど、手前ぇでもこの違いがよく解らない…。

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