判決、ふたつの希望
レバノン&フランス
ドラマ
監督:ジアド・ドゥエイリ
出演:アデル・カラム
カメル・エル・バシャ
リタ・ハーエク
カミール・サラーメ
【物語】 (シネマトゥデイ)
レバノンの首都ベイルート。パレスチナ人のヤーセル・サラーメとキリスト教徒のレバノン人トニー・ハンナが、アパートの水漏れをめぐって口論を始める。さらに、ある侮辱的な言動が裁判に発展。
これをメディアが大々的に報じたことから政治問題となり、さらには国中を揺るがす騒乱が巻き起こる。
イランを筆頭にサウジ、パレスチナにイスラエルとそれなりに中東諸国の映画を観てきてはいるけれどもレバノンとなると全くの初めてだし、印象もレバノン杉をあしらった国旗とオレが子供のころから内戦してる印象しかない。
それはそれとして中東産の軽めのサスペンスタッチのドラマはなかなかオモシロく、何より17年のアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされ、各国で高い評価を得ていることもあって期待していた作品だったで張り切って観に行ってきた。
些細な衝突、ただ互いに謝罪のひとことがあれば国中を巻き込む大騒ぎになることもなかったのに…の法廷劇のオモシロさも然ることながらその根底にあるレバノンを取り巻く民族&宗教&難民問題、不幸な歴史、個人や民族の尊厳、そして歩み寄りを語っていて想像をはるかに超えて考えさせられ、見応えのあるとても素晴らしい作品。
ただ、残念なのはそれなりに中東の作品を観ているにもかかわらず、レバノンがイスラム教中心の地域にあってキリスト教寄りの国である等の政治&宗教的諸問題を未だによく解ってねぇ(シャロン首相の名前なんて久々に耳にしたよ)なんで、その辺の知識をもう少し確りと持っていれば、もっと感動もできただろうし、もっと深く考えさせられたことだったと思う。
互いに意固地になって反発しあうも何かにつけて狭量的なレバノン人のトニーがパレスチナ人のヤーセルのエンストした車を目にして職業柄も手伝って手を差し伸べ、そのクソ真面目で不器用なヤーセルも悪かったと頭を下げるふたりの歩み寄りと己の愚かさに気づくエピは、おそらくこの先も解決されることは難しいであろう中東地域の諸問題かもしれないけれどもタイトル通り【希望】を感じさせられて感動的。
ふたりそれぞれ弁護を引き受ける弁護士が父娘であったり、板ばさみになる工事会社の管理職のおじさん、トニーの意固地さ狭量さに憤慨する奥さん、すべての感情を取っ払って原点に還って冷静な判決を下した裁判長とふたりを取り巻く脇の個々のキャラ設定もとても確りしていてとてもヨカッタ。
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» 『判決、ふたつの希望』 2018年7月12日 ユーロライブ [気ままな映画生活 -適当なコメントですが、よければどうぞ!-]
『判決、ふたつの希望』 を試写会で鑑賞しました。
パレスチナ問題とか知らなくても大丈夫よ! かなりのお勧め
【ストーリー】
レバノンの首都ベイルート。パレスチナ人のヤーセル・サラーメ(カメル・エル・バシャ)とキリスト教徒のレバノン人トニー・ハンナ(アデル・カラム)が、アパートの水漏れをめぐって口論を始める。さらに、ある侮辱的な言動が裁判に発展。これをメディアが大々的に報じたことから政治問題となり、さらには国中を揺るがす騒乱が巻き起こる。
こういう作品は日本でつくると野暮ったくて軽くなってし... [続きを読む]
» 「判決、ふたつの希望」☆今年のベスト入り決定! [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
傑作!!
これはもう観終わった途端、私の中で『今年の映画ベスト5』入り決定となったのだった。
いやあ、台風の中びしょ濡れでも観に行って良かった~~♪ [続きを読む]
» 「判決、ふたつの希望」 [或る日の出来事]
単一民族の国にいて良かったよ。 [続きを読む]
こんにちは。
民族間の問題はどこの国でも複雑な様相を呈しますが、今回のレバノン-パレスチナの問題は、日本などではあまり大きく取り上げられないことだけに、実態を調べたり、今回の法廷での映像を少し見せられただけでも大変衝撃的に思いました。
このような歴史が背景にあれば、問題解決は一朝一夕にはできないでしょうが、同じ土地に住む者がそれぞれストレスなく共存できればいいのにな、と思いました。
それにしても、私も「レバノン映画」は初めてですので、興味深かったことと、役者がとっても上手いことに驚かされました!
投稿: ここなつ | 2018年9月 3日 (月) 12時45分
風情さん☆
なかなかの傑作でした。
二人が和解する瞬間は不器用ながら人間と人間の本来あるべき姿を見せてくれたように思います。
中東情勢に詳しくなくても、本当にどこにでも起こりうることでもあり、共通したものとして考えさせられる映画でしたね。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2018年9月 3日 (月) 18時43分
コメント感謝です♪
ここなつ様
民族と民族、宗教と宗教と大きくなるとなかなか解決出来えない複雑な諸問題も、本作のふたりのように小さな一歩かもだけどまずは人間と人間が解り合い、それが大きくなっていけば事はもっとスムーズに行くのと思えたりもしましたし、それぞれのアイデンティティとかいろいろ考えさせられました♪ (゚▽゚)v
ノルウェーまだ~む様
ホントはおっしゃる通り「人間の本来あるべき姿」を観るところなんでしょうけど、どうしても背景にあるレバノンを含めた中東地域の複雑な情勢のほうに気が向きがちになっちゃいます。
にしてもものスゴく、シリアスな社会ドラマである一方で法廷劇のやり取りなんかはエンタメ性も強くあってその辺のバランスも素晴しくて傑作といってもです♪ (゚▽゚)v
投稿: 風情☭ | 2018年9月 5日 (水) 09時49分