スターリンの葬送狂騒曲
フランス&イギリス&ベルギー&カナダ
コメディ
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:スティーヴ・ブシェミ
サイモン・ラッセル・ビール
パディ・コンシダイン
ルパート・フレンド
【物語】 (シネマトゥデイ)
1953年のモスクワ。この国をおよそ20年もの間、独裁者スターリンと彼の秘密警察が牛耳っていた。
中央委員会第一書記のフルシチョフ、秘密警察の警備隊長ベリヤとスターリンの右腕マレンコフらが夕食に集う。
翌朝近くまで続いた宴会を終え、スターリンは自室に引き上げる。
世界史は得意ではないけれども、第二次世界大戦時の欧州とスターリンからブレジネフまでのソ連の歴史にはいちばん興味がある。本作は長きにわたって恐怖政治を敷いた独裁者スターリンの死後、後継者の座を巡ってフルシチョフを筆頭に権力者たちによる狂気のイス獲りゲームはソ連の歴史の中でも取り分けて興味あるところだし、それ故にロシアでは上映禁止になったという付加価値もあってスッゲぇ期待していた作品だったんで張り切って観に行ってきた。
冒頭の処刑リストに名前がのった人たちを逮捕、拷問、そして処刑していくされていくシーンなんかは史実なだけに決して笑いごとではないエピにもかかわらず、こうもテンポよく流れ作業的に描かれちゃうと思わず笑ってしまう。
「帰ってきたヒトラー」のようにその国の笑えない黒歴史を揶揄りに揶揄って笑っちゃおうとブラックに描いた作品は大好物。
トップの座を巡って鍔迫り合いを繰り広げるフルシチョフとベリヤの各陣営の取り込み、裏切りにだまし合い(描かれてはいなかったけれど暗殺は絶対的に行われてたことと思う)の権力争い劇も本来ならばこれまたエゲつ過ぎるところを登場する面々がみな間抜けぽくコミカルに描かれてるからとても観やすく頭に入りやすくオモシロい。
独裁と恐怖政治のスターリンとは違い何となく融和政策のイメージがあるフルシチョフ。本作でもどこなくスゴ味に欠け周りに振り回されている感じで肩入れしたくなるように描かれていたけれども、そんな彼がライバルのベリヤを蹴落とし権力の座に就いた途端、スターリンの遺児に対して処遇決定を突きつけと、それまで隠されていた砥がれた牙を見せつける姿に権力の座に就くだけの本来の優れた才覚を最後の最後に観させられた感じ。
フルシチョフ役のスティーヴ・ブシェミの存在感がスゴイ。 (↑)のプロパンガポスター調のオリジナルポスターも最高。
クレジット時で当時の写真の演出は本作が実話であったことを思い出せるものがあって怖い…。
ソ連関係でいえばフルシチョフの後に座ったブレジネフと東ドイツの書記長だったホーネッカーによるディープキスの顛末というかその辺を語った作品が観てみたい。
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1953年。 粛清という恐怖で20年間ソ連を支配していた独裁者スターリンが、後継者を指名しないまま急死した。 秘密警察を牛耳るベリヤが一早く動き、スターリンの腹心だったマレンコフが代理を務めると宣言。 第一書記のフルシチョフは葬儀委員長を押し付けられる。 厳かな国葬準備の裏で、最高権力者の座をめぐり熾烈な争いが始まっていた…。 ブラック・コメディ。... [続きを読む]
こんにちは。
この作品、とても面白かったです。崩壊する前のソ連の情報ってあまり日本には詳細語られず、なんとなく秘密のヴェールに包まれていたというか…いわんやスターリンの時代には生まれておりませんでしたので、単純に「粛清の人」というイメージしか持たず…当地の環境(寒さ)もあいまって(寒いのが苦手なもので)、私には「怖い謎の国」でしたが、本作を観ると、結局権力に囚われる人間の愚かさを描いていて、そのブラックさは本当に愉快でした。
こういう作品が創られるようになったのも、世界の環境が変わってきているってことですかねぇ。
投稿: ここなつ | 2018年8月17日 (金) 12時40分
コメント感謝です♪
親が子を売り、子が親を売る…怖いですよね…。
ナチスによるホロコーストなんかはNHKの映像で観るなんちゃらのドキュメント等でよく目にするけれども、ことソ連のスターリン独裁時代の粛清となると、ホントあまり目にすることがないから岡田真澄ソックリのただの狂ったオッサン程度でしかないから、本作のような気張らずにかる~い感じで勉強できる作品はホントありがたいことです♪ (゚▽゚)v
投稿: 風情☭ | 2018年8月19日 (日) 17時44分