帰ってきたヒトラー
ドイツ
コメディ
監督:ダーヴィト・ヴネント
出演:オリヴァー・マスッチ
ファビアン・ブッシュ
クリストフ・マリア・ヘルプスト
カッチャ・リーマン
【物語】 (シネマトゥデイ)
ナチス・ドイツを率いて世界を震撼させた独裁者アドルフ・ヒトラー)が、現代によみがえる。
非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマンにスカウトされてテレビに出演する。何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが…。
オレの中で台湾産の青春群像劇同様にドイツの史実&コメディとジャンルを問わずヒトラーを扱った作品は高い確率でハズれがない。なんでも本作は原作をふくめて本国ドイツでは大ヒットしたようだし、日本でも前評判がかなり高いこともあって期待値も大きく、公開を楽しみに作品だったんで、張り切って観に行ってきた。
現代にタイムスリップしてきたヒトラーの言動が、モノマネではなく当時の彼の意見をまんま発言し行動しているだけなのにも関わらず、そのひとつひとつが現在のドイツをはじめとする欧州、しいては世界がかかえる移民とテロ問題、世が安定になるとヒトラーやトランプのような過激思想の持主、極右政党が求められる世情に合致してもいれば、理にもかなっていたりで思いのほか過激な風刺劇の趣。またヒトラーがモノマネ芸人ではなく、純度100%のヒトラーであることに気づいた者が行きつく…のオチと、すべてにおいて笑うに笑えないオモシロさがあると同時にかなり怖くもある作品だった。
映像スタイルも時に「ボラット」のようにドキュメント調の展開で、ナチの制服で街中をあるくヒトラーに対して示される街中の人たち反応もそれぞれで興味深くあったし、終盤でのヒトラーのセリフなんかも考えさせられ、ふざけてるようでかなり作り込まれた感あり。それに日本じゃ東条英機をはじめ大川周明、北一輝、井上日召といった戦中時のチョイとヤバめ人たちを取り上げてコメディ仕立てで今の世をディスるなんて絶対的にムリなだけに、多面的にヒトラーを描くドイツ映画界はただスゲェと思うばかり。
タイムスリップなだけに現代でヒトラーの相方となるファビアンの部屋に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のポスターが貼ってあれば、彼の衣装もマーティそのものと小ネタも利いてれば、ファビアンの名前から察するにどことなく東欧ユダヤ系ぽくあるあたりや、牧場に張り巡らされた牛脱走防止用の電流ワイヤーに触れて感電する行はまるでドリフばりのコントだし、人種差別発言はOKだけど犬を撃ち殺すのはご法度という嘘か真実か?のTV業界事情と随所でバカぽさ全開は最高にオモシロかった。
オリヴァー・マスッチのなりきりぶりと、時に茶目っ気たっぷりのヒトラー役が圧巻。
映画の撮影とはいえヒトラーの恰好で街中をブラつくのにはかなりの勇気と度胸を要したことと思う。ノリでナチス式の敬礼をしてくる人もいれば、中指突き立てて来た人もいたしね。
出演はしてねぇけど、「ヒトラー ~最期の12日間~」でヒトラーを演じたこともあってか名優ブルーノ・ガンツがやたらと引き合いに出されるが多いのが笑える。
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